汚染水問題を放置し続ける安倍政権の狂気とそれを許す緩みきった日本

天木直人

 いまこの国で緊急に解決を要する大問題は何か。それは消費税増税でも集団的自衛権行使の容認でもTPPでも脱原発でもない。 福島原発事故の収拾であり、その中でも、最も緊急を要するのが汚染水漏れの停止である。この事に異存を挟む国民はいないはずだ。 それにも関わらず、安倍自民党政権は東電に任せっぱなしだ。 もはや東電では対応しきれない事は自明であるにもかかわらず、である。
 私がもっとも驚いたのは夏休み明けから公務に復帰した安倍首相の第一声だ。「秋の国会へ向けて身を引き締めて公務に全力投球していく」、と言ったという。 十分に夏休みをとったのだからそれは当然だ。 しかしその公務とは消費税増税でありTPP交渉だという。日米同盟化であるという。 報道された安倍首相の言葉の中には汚染水収束の言葉はない。
 福島原発事故が起きた当時の政府・東電の対応を巡って、いま民主党政権の責任者の刑事責任が問われている。 それは当然だ。 しかし刑事責任と言うなら、今度の汚染水流出を止められなかった安倍自民党政権の責任の方こそはるかに明確で重大である。 もはやこれはあらたな原発事故に等しい(8月22日東京新聞社説)からだ。大地震直後の原発事故に際しては混乱があった。 時間的余裕もなかった。 しかし今度の汚染水問題は、その深刻性が連日のように指摘され、その解決の必要性を皆が認め、そしてメディアも、もはや日本政府の責任だと書き続けてきた。 それでも安倍自民党政権は何も手を打とうとしないのである。それが放置されている。
 われわれ国民は何も出来ない。 何を言っても、書いても、政府に影響力を与えることは出来ない。 しかし政治家、官僚、大手メディア、そして反原発を唱えて政治家になったり、名を売った者たちは違う。行動を起こそうとしないのは無責任だ。その気になれば政府に影響力を行使できる。 国民を先導してデモを起こせる。しかしその動きがまったく見えてこない。 日本全体が思考停止状態だ。緩みきっているとしか思えない。

                                                                          (了)