綺麗な国土を取り戻すための3つの具体的な考え方

武田邦彦中京大学教授
福島を中心とした土地がすっかり汚れてしまいました。今、お米を作るときにも「大丈夫だろうか?」と心配しながら収穫をしている状態です。こんなことは長く続ける訳にはいかないでしょう。だから、きれいにしなければなりませんが、この福島の地を中心として日本人が安心して暮らすことができる手順には3つ考えられます。

1) 被曝方式(政府がとっている政策)

2) 避難方式(かつてソ連がとった政策)

3) 除染方式(私の提唱している方法)

それぞれについての具体的な方法について考えてみたいと思います。

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まず、現在の民主党政府が採っている方式は「被曝方式」で、その基本的な考え方は、「これまで放射線の被曝は怖いと言ってきたし、法律でも1年1ミリシーベルトを限度としていたが、それは間違いで、本当は1年50ミリシーベルト(外部、内部を加えて)ぐらいだから、暫定基準値を実際の被曝に合わせて高くすればそのまま汚染された土地に住むことができる。政府も東電も何もしなくてもよい。」というものです。

別の呼び方をすれば、「イチカバチ方式」、もしくは名前の響きは悪いのですが、「人体実験方式」と言ってもよいでしょう。つまり、どのぐらい被曝するとどうなるか医学的にはハッキリしていないので、日本人に被曝させてその様子を見るという考え方です。10年ほど経つと福島を中心としてどのぐらいのガン患者さんがでるか、それを固唾をのんで見守り、福島医大放射線被曝の先生を招聘して、治療に当たらせる方針です。後の述べたいと思いますが、「障害者がでることがわかっているのに、お金を優先して何もしない」ということはすでに社会的に許されないことになっていますが、日本はまだ野蛮国なのでしょう。

このような方式を定着させるために、政府は「1年1ミリシーベルトの法律の規制値は間違いだ」と主張する多くの「専門家や医師」を全面に出して、大規模なキャンペーンをやっています。法律違反を勧めているのですから、もしガン患者が出たら、それを勧めた専門家や医師はどのような責任をとらされるのか、法律的にも検討が必要でしょう。

私はとても違和感があります。医学的に正しいということはなかなか難しいのですが、1992年の環境サミットで国際的な合意に達した「予防原則」以来、政府も専門家もそろって「学問的に不確かな場合は安全サイドを採る」と言い続けてきたのに、急に変わったのです。特に環境省がなにも言わないのは、何のために環境省を国民が設置したのかということすら疑わしくなります。

政府の機構は「行け行けドンドン」という役所だけではなく、原子力安全委員会環境省などのように「ちょっと待て」という役所もあるのですが、それが「行け行けドンドン」と一緒になって本来の役割を果たしていないのです。原子力の安全性についても福島原発事故という新しい事実を受けて、原子力委員会(推進)と原子力安全委員会(規制)とが激しく議論し、新しい考え方を決めなければならないのですが、そのような動きも全く見られません。

また、環境省は環境中の放射線が法律の枠を超えているのですから、環境を守るという側面から強く被曝量を1年1ミリに押さえるように提言するために存在する役所と考えられます。

政府がとっている「被曝方式」が万が一にでも間違っていて、従来からの被曝と病気の関係が認められたら、政府の「被曝方式」は傷害罪になるのではないかとも思います。というのは、学問的にも「一人一人の疾病」が見られる限度は1年1ミリより多くても、集団の場合、障害が見られるというのが従来の知見だからです。

ちょっと聞くと誰もが「おかしい」と思いますが、どうも「50歳過ぎのおじさん」と話をしていると、この被曝方式の本音は「除染にお金がかかるから、子供に被曝して貰う方がよい。自分の子供でないのだから、関係ない」ということのようです。政府もこのような国民の「声なき声」をくみ取って被曝方式を採用していると考えられます。

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(参考)

外部被曝  1年20ミリまで暫定的にOKとすると、

内部被曝  呼吸によるものが1年20ミリ

食材被曝  5ミリから20ミリ

となりますから、合計45ミリから60ミリ程度の被曝になる可能性を含んでいます。また、2)および3)の方法については次の機会に書きたいと思います。

平成23年8月30日)