埼玉県所沢市長選挙が予感させる民主党・野田佳彦政権は「あと1年9か月余り」の「苛政」

板垣英憲

◆首都圏内の埼玉県所沢市長選挙の結果が、あと1年9か月余りの任期満了による次期総選挙と参院議員選挙の趨勢を予感させている。
 結果は、以下の通りである。(候補者氏名 党派 得票数)
当選 藤本正人=無所属   38,655
   当麻よし子=無所属  37,029
   並木まさよし=無所属 18,967
            計 94,651(無効 1,189、合計 95,840=投票率34
.68%=前回2007年10月、30.70%)
 自民党推薦の藤本正人前県議(新人、49歳)が、連合埼玉推薦の当麻よし子市長(現職、民主党出身、県内唯一の女性市長、62歳)を破って当選し、保守による市長奪還が実現した。その票差は、1626票だった。
 埼玉県のなかでは、所沢市は、県西部の有力都市部の1つである。それだけにいわゆる「都市型選挙」が繰り広げられる。地縁血縁にとらわれない新住民が多数を占めている。
 保守勢力は、藤本正人前県議と自民党並木正芳衆院議員による「保守分裂選挙」であったにもかかわらず、藤本正人前県議が辛勝したことに注目している。保守票が、合計57622票(有効投票総数の61.09%)を獲得していたからである。埼玉新聞は10月25日付け朝刊「1面」で「所沢市長選 自民 復調の兆しか」「保守陣営が票伸ばす」という見出しをつけて解説(広川二六記者)し、埼玉新聞共同通信テレビ埼玉共同の出口調査の結果について、「自民支持78%藤本氏、当麻氏民主票固め切れず」という見出しをつけて、分析記事(沢田稔行記者)を掲載している。
 朝日新聞も10月25日付け朝刊「第2埼玉面」(28面)で、やはり「所沢市長選 藤本氏が勝利 自民の回復基調 鮮明」という見出しをつけて、報道している。だが、このなかで、「もっとも、当麻氏の得票は前回を3千票上回っており、民主退潮とは言い切れない」と書いているのは、その通りだ。だが、これは投票率が34.68%で、前回2007年10月、30.70%よりも、3.98%アップしたためである。埼玉新聞が指摘しているように、藤本正人前県議も、統一地方選挙が行われた4月の県議選での得票よりも3000票の上積みをしていると指摘している。そのうえ、保守票の合計をはじき出して、合計57622票(有効投票総数の61.09%)を獲得しているうえに、藤本正人前県議が「民主支持層も22。7%が藤本氏に投票している」という事実を踏まえて、「自民 復調の兆しか」と書いている。この点で、朝日新聞の記事は、甘い。
民主党は、岡田克也元外相が2010年9月17日、民主党代表選挙で再任された菅直人の要請を受け、3度目の民主党幹事長に就任して、2011年8月の民主党代表選で選出された野田佳彦による組閣で財務相を要請されて固辞、新執行部の発足に伴い幹事長を退任したこの間、各種選挙で1勝したのみで、連戦連発だった。この傾向はいまでも続いている。それを実証したのが、所沢市長選挙であったとも言える。
 このままでは、民主党は、あと1年9か月余りの任期満了による次期総選挙と参院議員選挙で、大敗北するのは、間違いない。大阪府知事選、大阪市長選挙の「ダプル選挙」に独自候補を立てられないようでは、政権政党とは言えない。大阪市長選に立候補を決めている橋下徹知事を打倒するだけの大型候補を擁立できるか否かも、国政選挙での民主党の趨勢を左右する。
民主党野田佳彦政権が、あと1年9か月余りの政権に終わる「不吉な兆候」は、すでにいくつも現れている。以下、列記してみよう。
 ①厚生年金支給開始年齢を「65歳→68歳、70歳」に引き上げる案を提示して、多くのサラリーマンから「国家的詐欺」と猛反発を受けている。
 ②米国主導のTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加を決めている「結論ありき」の政治姿勢が、農協、医師会、薬剤師などから反対論が噴出している。
 ③米国の強い圧力を受けて、沖縄普天間飛行場辺野古への移設を強行しよとしている傲慢姿勢が、沖縄県民の感情を逆撫でしている。 
 ④財務省の操り人形として、消費税増税路線を驀進しているのが、 国民には「苛政」と映っており、圧政感を募らせている。
 ⑤政治主導どころか、「官主導政権」の正体が、バレバレであり、多くの国民に失望感を与えてしまっている。
 実は、これらは、すべて「民主党政権」を「短命政権」と喝破している官僚たちが、「あと1年9か月余りの任期満了による次期総選挙と参院議員選挙」までに、「苛政」を実行させ、自滅させようとする、これこそ、文字通りの「陰謀」なのである。野田佳彦首相は、このことに鼻から気づいていながら、気づいていかないフリをしている。政権を2年担当できれば、それでもって瞑すべきと考えているからである。何度でも言うけれど、これこそ、福沢諭吉翁が「学問ノススメ」で言っている「愚民の上に苛き政府あり」である。
 それにしても、日本には、現在進行中の出来事に関する「生情報」ではなく、古い古いひからびて、カビの生えた歴史的文書(ほとんどがニセ)を文証としてしか信じない石頭が、あまりにもすぎる。故にいま策動されている「官の陰謀」すら見抜こうとすらしないのである。いわんや、「国際的陰謀をや」である。ああ、情けな