日本は原発事故の対応の間違いで崩壊するのではないかという危惧

天木直人

消費税増税を強行する野田首相はやがて行き詰まるだろう。
それはもはや避けられない。
しかし政権崩壊よりももっと深刻な事がある。
それは原発事故の対応の遅れと間違いが、ひょっとしてこの国を
崩壊させるのではないかという危惧である。
率直に言って私は放射能汚染についての危機意識は希薄である。
今度の福島原発事故をきっかけに私は放射能の危険性を知り、人間性
とは両立しない核物質を利用する核兵器原発の撤廃をこれまで以上に
強く唱えるようになった。
それでもなお核物質に対する私の危機意識は希薄だ。
目に見えないからだ。
痛くもかゆくもないからだ。
日常生活にはほかにも急いでしなくてはならないことがあるからだ。
それでいいのか。
そういって人に勧められて一冊の本を読んだ。
それは米国の原子力技術者であるアーニー・ガンダーセンという人
の書いた「福島第一原発 真相と展望」(集英社新書)という本である。
今売れているらしい。
彼は原発事故が起きて間もないころ、限られた日本から伝えられる
情報にもとづいて、もはや福島第一原発の核燃料の7−8割はメルト
ダウンしているとCNNでコメントし、危機を煽ると非難された人物
であるという。
しかし、米国のスリーマイル事故の経験から発せられた彼の言葉は、
その後の日本政府の対応のまずさと、それがもたらす日本の危機状況を
見事に言い当てている。
その本を読んだ後にあらためて日本の現状を考えてみた。
政府の事故収束宣言にもかかわらず次々と明らかにされる再爆発の
危険性、放射線物質の垂れ流し、核汚染瓦礫の全国への拡散、原発事故
現場で働く労働者の過酷な労働条件の放置、内部被ばくの危険・・・
いずれもガンダーセン氏がその著で指摘している通りだ。
そして私の手元にある3月13日の東京新聞鎌田慧の「本音のコラ
ム」の記事のである。
これがこのメルマガの趣旨である。
「東北の鬼」という見出しのその記事の中に気にかかった個所があった
ので切り取っておいたのだが、ガンダーセン氏の本を読んであらためて
その深刻性に気づいた。
彼は書いていた。

・・・3月11日(の一周年記念の日)・・・郡山市の野球場で「原発
いらない!」集会が開かれた・・・「鎮魂の日」にすべきだ、という意見
もあったが、犠牲者が津波の死者だけならまだしも、原発事故によって、
すでに福島の子供たちに甲状腺に、しこりなどが現れはじめたのだから、
鎮魂だけに押し込めることはできまい。取り返しのつかないことになった
親子の心痛を思えば激しい怒りを感じさせられる・・・
もの凄い深刻な事をさりげなく書いている。
鎌田氏の言葉だ。私はそれを信じる。
子供たちに異常がで始めているというのだ。
それでも大手メディアはまったく騒がない。
政府は何もなかったかのように無視し続ける。
この国の政府とメディアは国民を見捨てているかのようだ。
国民を見捨てるような国に未来はない。

                              了