量的緩和は江戸時代の藩札制度か、紙幣「紙くず化」も

東京 25日 ロイター】 

日米欧の中央銀行が推し進める事実上の量的緩和は、疑似紙幣を大量に増刷した江戸時代の「藩札(はんさつ)制度」と重なる。当時は金や銀の裏付のない「ペーパーマネー」の氾濫で、紙幣は紙くずとなった。

危機対応と景気刺激を目的に大量の資金を供給している今回も、世界的に貨幣価値の劣化を示す兆候がみられており、これ以上の緩和政策を危ぶむ声が出ている。

<紙幣の紙くず化>

江戸時代の日本では、通貨が不足すると各藩が独自に領内で紙幣(藩札)を発行し、財政難の解消を試みた。しかし藩札は金銀に裏打ちされておらず、各藩の財政をもとに信用創造された紙幣だった。乱発した結果、価値が幕府発行の貨幣に対して著しく低くなり、インフレを招くケースが多く見られた。

日米欧各国が推し進める量的緩和は、藩札の乱発と同じ効果をもたらす可能性がある。現在の量的緩和は銀行に対し流動性を供給し、間接的にリスクマネーの拡大を期待する仕組みだが、国債などに集中している多量の流動性が貸出や投資を通じて市中に広がれば、ハイパーインフレによって紙幣は「紙くず化」しかねない。

日銀の白川方明総裁は4月に米ワシントンで講演し、「中央銀行の膨大な通貨供給の帰結は、歴史の教えに従えば制御不能なインフレになる」と警鐘を鳴らしている。

これまでは「紙幣が紙くずになる前にバブルが発生し、バブルによって緩和政策にブレーキを踏む機会が与えられてきた。だが、現在のバブルは株や不動産などの万人にわかりやすい指標ではなく、過去最低利回りを更新する各国の国債に潜んでいる」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は話す。国債は利回りが低下しているのでデフレ的だという認識に陥りやすいが、既発債の価格から判断すれば明らかにバブルだという