谷垣前自民党総裁を叩きのめした野田首相の言葉

天木直人

自民党総裁選に不出馬宣言をして以来谷垣禎一という政治家の名前が
すっかりメディアから消えた。
あれほど毎日メディアに取り上げられていたのにである。
やがて野田首相に代わって日本の首相になるかもしれないと報じられ
ていたのにである。
それが政治の世界というものだ。
しかし私は彼に同情する気はまったくない。
それどころか腹立たしい思いだ。
私が最も望んでいた野田首相の早期退陣をすっかり潰し、今では向かう
ところ敵なしと思われるほどに野田首相を強くしてしまったからである。
思えばあの時、つまり少数野党7党が不信任案決議を出したとき、最大
野党の自民党総裁の谷垣氏がそれに同調していれば今頃は解散・総選挙に
なって野田民主党政権は終わっていた。
それが今はどうだ。
みずから総裁の地位を手放してしまったどころか野田民主党政権の長期
化に完全に手を貸してしまったのだ。
そしてこの野田首相の発言である。
野田首相民主党代表選を巡る12日の日本記者クラブ公開討論会
で次のように語ったと9月13日の読売新聞が報じていた。
すなわち谷垣自民党総裁との「近いうち」に衆院解散で合意した事に
ついて「天地神明に誓って特定の時期は明示していない」と強調したと
いう。
「解散の時期は私も示していないし、谷垣総裁から詰めてきていない」
と話したというのだ。
ただでさえ屈辱の中で総裁選を断念せざるを得なかった谷垣氏だ。
その谷垣氏にとどめを刺すように、谷垣総裁が政治生命をかけたはず
の早期解散・総選挙の密約について、それがなかった、谷垣氏もそれを
求めなかったと暴露したのである。 しかも、谷垣総裁が総裁選不出馬を宣言し、もはや政治的にメディア
から消えてしまった後に暴露したのである。
死者に鞭打つような仕業だ。
野田首相とはこういう発言が平気で出来るような政治家というわけだ。
この厚顔さこそ野田首相の強さなのだ。
その野田首相が国民の意見に耳を傾ける振りをしてそれを無視し、
ドンドンと反国民的政策を推し進めている。
長期政権をもくろんでいる。 
非情、厚顔、融通無碍、それらを平気で使い分け、ふたこと目には
国民の丁寧に説明してご理解を得るという。
国民をハナから馬鹿にした態度だ。
暴言を繰り返す橋下大阪知事や石原慎太郎東京都知事、ウルトラ
保守のおめでたい安倍晋三元首相などはむしろおのれに忠実なわかり
やすい政治家だ。
それゆえに日本の首相はつとまらないだろう。
野田首相に比べればはるかに安全で御し易いのだ。
本当に危険なのは野田首相のような自分の正体を見せない官僚的な
現実主義者である・・・