尖閣諸島問題

このブログに度々登場する元レバノン大使・天木直人さんのブログ。毎度、見事な情報分析と解説を書いておられるのですが、9月28日の「日中問題の打開は簡単だ。前原大臣のクビを差し出せばよいだけの話だ。」は、元外交官らしいシビアな世界を経験した氏ならではの提言で、私は、ナルホドと合点、スカーット晴れた秋空のような気分になりました。

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日中問題に関する今日(9月28日)の各紙の記事の中で群を抜いて秀逸
なのは朝日新聞一面のスクープである。

 その中で朝日はこう書いている。菅首相は「初動に問題があったようだ」と
知人に漏らしていたという。

 それは事件直後の9月8日に、当時海上保安庁を指揮する前原国交相
「強硬路線」が船長を逮捕・拘留した事をさす。
 
 実はこの前原元凶説は朝日だけが書いているわけではない。スクープではない。

 発売中の週刊朝日10月8日号とサンデー毎日10月10日号もまた同様の指摘
をしている。

 周知の通り尖閣諸島問題は1972年の日中国交正常化以来の日中間の最大
の政治問題であった。領土権にかかわる問題であるから双方は譲れない。

 だからこそ訒小平は皆が受け入れられる方法が見つかるまで一時的に棚上げ
してもよい(1978年の訪日時の記者会見)、と言い、あの小泉首相でさえ
尖閣諸島への不法侵入者を中国に強制送還して問題の表面化を避けたのだ。

 お互いの領有権主張の立場に踏み込まない唯一の外交的知恵であった。

 それを前原氏はいとも簡単に破った。公務執行妨害の容疑で逮捕し、拘留
した。日中間の暗黙の了解を踏み外した。中国が猛反発した理由がここにある。

 ところがよりによってその前原氏が9月17日の改造人事で外相になった。

 外相になったとたん中国を逆撫でする強硬発言を連発した。ここに至って中国の
民主党政権に対する態度が決定的に対決姿勢になった。
 
 解決の糸口がまったく見えない日中問題の解決は、実は簡単なことだ。

 菅首相が日中外交を混乱させたと言って前原大臣を更迭すればいいのだ。

 中国はたちどころに軟化するだろう。

 いや、仙谷官房長官や岡田幹事長や前原外相に対中外交を任せた自分が
悪かったと謝罪して菅首相が総辞職すればもっといい。

 それは決して中国に屈した事にはならない。

 日中双方の指導者たちが知恵を出し合って政治問題より経済問題を優先させて
なんとか良好な関係を保ってきた。そのお陰でやっと日中経済関係が太くなり
つつある。

 その努力をぶち壊した軽率な外交を、日中双方の政府、国民に菅民主党政権
謝罪し、その責任をとって辞めるだけの話である。

 日本と中国の双方の政府・国民が喜ぶ一石二鳥だ。

 おまけに菅民主党政権など一日も早く辞めてしまえと考える私のような者に
とっては一石三鳥だ。

 菅首相には一刻も早くその事に気づいてもらいたい。

 菅民主党政権が続く限り何をやっても無駄だ。

                              了

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