野田佳彦財務相は、新首相になるが、松下幸之助翁の理想「無税国家」を忘れた不肖弟子だ

板垣英憲ブログ
◆「金魚とドジョウ」「無税国家と増税国家」―2つを並べてみると「理想と現実」との間の距離は、絶望的に果てしない。民主党の新代表に選ばれた野田佳彦財務相は、「理想と現実」の狭間で、悩み苦しんでいるのか、それとも、諦めているのか。
 8月29日に開かれた代表選挙の政見演説のなかで、「私は、きれいな着物を着ている金魚にはなれないドジョウ。泥臭くてもやるしかない」と金魚になるのは無理と諦めている。しかし、「無税国家と増税国家」は、どうだろうか。「無税国家」を唱えたのは、松下幸之助翁だった。この日本を「無税国家」にするという理想を掲げて、自ら国会議員になろうとまで思い詰めていた。突然、「ワシは政治家になる」と言い出した。だが、齢80歳を迎えようとしていたころだつたので側近たちや周辺の人たちから、「功なり名を遂げた経営の神様が、万が一、落選でもしたら、晩節を汚すことになるから止めてください」と引き止められた。そこで、松下幸之助翁は、若い世代に自ら掲げた理想である「無税国家」の実現を託そうと、1979年、財団法人である松下政経塾を創設したのである。江戸幕末に吉田松陰が教え、明治維新の志士たちを輩出した「松下村塾」の現代版をイメージしていた。この学び舎に志ひとつを引っさげて駆けつけた1期生の1人が、野田佳彦財務相であった。このときから、32年にして、やっと、「総理大臣」を輩出することになった。初代・伊藤白文から数えて「第95代」目だという。
 それでも、「理想と現実」からみると、野田佳彦財務相は、師匠・松下幸之助翁の「無税国家」という理想からは、極めて程遠いところにいる。「消費税増税」「復興税」という国民に負担を求めることばかり打ち出し続けているからである。
 夕刊フジは8月20日付け紙面(2面)で、「松下政経塾創立の立役者 江口克彦氏が辛口評価」「野田首相適性44点」「財務省の言いなり」という見出しをつけて、ジャーナリストのの安積明子記者の記事を掲載している。江口克彦氏は現在、みんなの党所属の参院議員である。安積明子記者は、記事のなかで、江口克彦参院議員の発言を織り交ぜながら、以下のように述べている。
 「松下政経塾で学んだのなら、松下幸之助氏の「税金を安くするのが政治家の役割だ」という主張を頭に叩き込んだはず。チャレンジ精神を失い、「理念や志のためには死んでもいい」という覚悟を忘れている。省内をまるくおさめよとする余り、財務官僚の書いたペーパーをそのまま読んでいる。これでは財務省の傀儡も同然だ」
 南洲翁遺訓は、税金について、こう述べている。
 「13 租税を薄くして、民を裕(ゆたか)にするは、即ち国力を養成する也。
故に国家多端にして、財用の足らざるを苦しむとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐たげぬもの也。能く(よく)古今の事跡を見よ。道の明かならざる世にして、財用の不足を苦しむときは、必ず曲知小慧(きょくちしょうけい)の俗吏を用ひ、巧みに聚斂(しゅうれん)して、一時の欠乏に給するを、理材に長ぜる良臣となし、手段を以て、苛酷に民を虐たげるゆえ、人民は苦悩に堪へ兼ね、聚斂を逃れんと、自然譎詐狡猾(しぜんきっさこうかつ)に趣き、上下互に欺き、官民敵讐と成り、終に分崩離拆に至るにあらずや」 
(現代語訳:税金を少なくして国民生活を豊かにすることは、国力を養成する。
だから国のやることが多く、財源不足で苦しむような事があっても、租税の決まった制度を守り、上の人間が損をしてでも、下の人達を、苦しめてはならない。
よく歴史を見よ。道理が明らかでない世にあって、財源不足で苦しむときは、必ずこざかしい考えの持ち主のレベルの低い官を用いて、その場しのぎをする人を財政が良く分かる立派な官と認め、(そういう官は)手段を選ばず、無理やり国民から税を取り立てるから、人々は苦しみに堪えかねて逃れようと、自然に嘘偽りを言って、上の人間と下の人間がお互いに騙し合い、官と一般国民が敵対して、最後には、国が分裂して崩壊するようになっているではないか)
 野田佳彦財務相は、日本新党結党に駆けつけた1人でもある。日本新党関係者にとって、野田佳彦財務相の首相就任は、創設者の細川護熙元首相に次いで、2人目の総理大臣輩出である。
 ちなみに、野田佳彦財務相は、財務省の傀儡であるばかりでなく、米国の傀儡に堕している。米国から要人が来日する度に、巨額の米国債を買ってきたというからである。4月17日には、ヒラリー・クリントン国務長官に「60兆円」分の米国債を買ったという。日本が買う米国債は、どこにも売れず、最後は紙くず同然となる。