財務省天国・庶民地獄政権が野田佳彦政権の本質

植草一秀ブログ
民主党代表選で野田佳彦氏が新代表に選出された。現時点で誰が就任するのかは未確定だが、2009年8月総選挙後、3人目の内閣総理大臣が誕生する。政権の枠組み、政策の方針が変わらないのであれば国民に信を問う必要はないだろう。
 しかし、政策基本方針を国政選挙での約束から変更するということであれば、主権者国民に信を問う必要がある。政党および国会議員は主権者国民の負託を受けた存在であり、政党および国会議員が主権者国民と約束した契約内容を順守する責務を負っている。
菅直人政権は政策方針を大転換したから2010年7月参院選で国民の信を問い、不信任の判定を下された。ここで菅政権は総辞職しなければならなかったが、14ヵ月も首相官邸を不法占拠したのだ。
 仮に野田政権が発足して、主権者国民との契約に反する政策を進めようとするなら、速やかに総選挙で国民の信を問う必要がある。それが、民主主義のルールである。菅政権が野党と談合して結んだ三党合意も、野田佳彦氏が主張している消費税大増税方針も、2009年8月総選挙での民主党と主権者国民との契約に照らせば、明らかな契約違反である。代表選で小沢一郎氏グループ、鳩山由紀夫氏グループが強く指摘したのはこの点である。
 2010年6月、菅直人首相は突然、参院選マニフェストとして消費税率10%への引き上げ方針を発表した。民主党内の民主的な意思決定手続きを経ることなしに新提案を政権公約に盛り込んだ。
 しかし、主権者国民はこの提案に猛反発し、菅直人民主党を大敗させた。
 最大の問題は、民主主義の意思決定の主役が国民であるとの原点を踏みにじっていることだ。菅政権がのちに野党と談合して決定し、今回の代表選でも問題になった三党合意も、菅政権の執行部が独断で決めたことで、党内での民主的な意思決定手続きを経て決定されたものではない。
 何よりも重要なことは、その内容が、総選挙の際に政党が主権者国民と結んだ契約内容に反していることだ。政権政党が主権者国民に約束した政策を、主権者国民に了解を取ることなく変更してしまったら、これは「詐欺」である。政策詐欺だ。野田民主党は政策詐欺集団だということになる。
 何よりも重要なのは税制問題である。
 2009年8月総選挙の最大の争点のひとつが消費税増税問題だった。麻生自民党所得税法附則104条を定めて、2012年度消費税増税政権公約に掲げた。
 これに対して、鳩山民主党は2013年の衆議院任期満了までは消費税増税を行わないことを政権公約とした。増税より前に官僚の利権を切ることを主権者国民に約束した。この選挙で主権者国民は鳩山民主党を政権与党に選択した。消費税増税を認めない意思を明示したのだ。
 三党合意とは、2008年9月総選挙で民主党が主権者国民と約束した「子ども手当」を廃止し、マニフェスト全体を廃棄することについての民自公三党の合意である。
 代表選をめぐるマスゴミ報道は、これらの点についての小沢氏グループ、鳩山氏グループの主張を徹底的に攻撃するものであった。
 小沢氏グループ、鳩山氏グループは、主権者国民との契約内容を守る責任を重視すべきだと主張した。主権者国民との契約を一方的に破棄する行動を取る菅政権の姿勢を批判した。だからこそ、消費税増税も、三党合意も新政権では抜本的に見直すことを表明したのだ。これが正論であることは、少し考えれば誰でも分かることだ。
 ところが、マスメディア(=マスゴミ)はこの小沢氏、鳩山氏グループの主張を、自分勝手な行動だとして、激しい攻撃の対象にしたのだ。子ども手当を廃止してマニフェストを廃棄する。そして、2010年代半ばに消費税率を10%に引き上げることを定める法律を2012年の通常国会に提出して成立させる。さらに、震災復興政策の財源を復興税で調達する。
 2009年8月総選挙、2010年7月参院選で主権者国民が示した意思と正反対の政策を実行することを野田佳彦氏は宣言している。主権者国民から見れば、野田佳彦氏も菅直人氏と同様、完全な背信者である。この背徳の政策方針を示した人物を民主党国会議員は新しい代表に選出したのである。
 決選投票で海江田氏に投票した議員以外は、その罪万死に値すると言って過言でない。
仮に野田政権が誕生するということになると、未曽有の大震災で存亡の危機に直面する日本経済、被災地で塗炭の苦しみに直面し続けている人々を、これから、未曽有の大増税が襲うことになる。
 他方で、財務省は統廃合で消滅したはずの国際協力銀行を肥大化させ、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫と合わせた天下り御三家を温存し、日本たばこ産業東証、日銀、横浜銀行、西日本シティ銀行などへの天下りを完全温存する。
 4年間で45兆円もの巨額損失を生んでいる外為特会では、本来、損失の穴埋めに使わねばならない利子収入を使って、役人が豪勢な海外旅行を繰り返している。
 重ねて記述するが、庶民には大増税を押し付け、官僚は天下り天国で引き続きのうのうと暮らす姿はすべて、主権者国民の了解を取り付けたものではない。民主党が新しい代表を選出したと言っても、主権者国民と契約した契約内容を破棄する政策を実行するというのなら、その前に、主権者国民に信を問うことが必要である。
 とりわけ増税については、必ずその前に国民に信を問うことが約束されている。2015年、2016年に実施する消費税増税を法律で決めてしまって、一体いつ主権者国民に信を問うというのか。
 法律を成立させてしまって1年も2年も経って総選挙が行われても、民主党増税法についてなど、まったく触れようとしないだろう。しかも、大政翼賛会増税を批判する勢力を消し去ろうというのだ。
 財務省天国・庶民地獄政権が発足して、主権者国民が黙ってそれを許すと思ったら大間違いだ。ここまで来た以上、本来の民主党主流派は今度こそ民主党と袂を分かち、広く同志を糾合して純粋な主権者国民政党を樹立して独立する必要がある。党名は「減税日本」でもよいだろう。最初は国会過半数に届かぬとも、必ず国会の多数を占める日が来るはずだ。
 大政翼賛会・野合民自公連合党名称を新党「増税日本」と名付け、次期総選挙を「増税日本」対「減税日本」で戦ってもらいたい。
 仮に野田政権が誕生するとしても、野田政権の本質が財務省天国・庶民地獄政権であることはすぐに明らかになる。この野田政権が財務省財政再建至上主義とともに沈没することは間違いない。