名物ぼたん鍋 セシウム禍 野生イノシシなど汚染

東京新聞

 東北や北関東でイノシシやシカなど野生動物に放射性セシウムの汚染が広がり、国が摂取制限などの規制の検討を始めた。森林の除染は方法が確立しておらず、今後の課題。有害鳥獣として駆除したイノシシの肉を観光資源として活用している自治体もあり、関係者は不安を募らせている。 (星野恵一)
 イノシシやシカの汚染が確認されたのは栃木、茨城、宮城、福島各県の一部自治体。有害駆除で捕獲した個体の検査で分かった。駆除されたイノシシは、市町村が許可すれば自家用として食用にすることができるが、各県は摂取を控え、食用にする場合は事前の検査を求めている。
 「イノシシは地表の草や木の実などを食べる。放射能の影響は予想していたが、これほど汚染されているとは思わなかった」と栃木県の担当者。同県では矢板市那須町塩谷町で、シカと合わせて七頭で規制値(一キログラム当たり五〇〇ベクレル)を超える同五四五〜一一八五ベクレルが検出された。
 同県那珂川町は二年前に町営のイノシシ用の食肉処理場を設置し、駆除したイノシシの肉を地域活性化に利用し始めたばかり。同町など県内七市町と、近接する茨城県の六市町からイノシシを受け入れ、肉を「八溝(やみぞ)ししまる」と名付けて、温泉郷や飲食店、加工店に卸してきた。
 那珂川町の担当者は「今は全頭検査で安全性を確認して提供しているが、風評被害もあり、注文は減っている」と嘆く。十一月十五日に狩猟解禁となるが、同県担当者は「食べられないと、狩猟者が減り、有害鳥獣が増えるのでは…」と話す。
 日立、土浦、高萩の各市でイノシシの汚染が確認された茨城県では、石岡市が以前からイノシシ肉で有名。市の祭りではイノシシ鍋などがふるまわれてきた。同市担当者は「市内のイノシシは規制値を超えていないが、今年は市の祭りでイノシシ肉は提供しない。観光の目玉だったのに」と残念そうに話した。
 福島、二本松両市でイノシシの汚染が確認された福島県は、狩猟解禁までにキジ、ヤマドリなどに検査対象を広げる。同県担当者は「野生動物がすむ森林の除染は難しい。汚染はいつまで続くのか」と話した。