Symbol つまり瞳に見えない Joker

独りファシズム

この国は法治国家の相貌をかなぐり捨て、狂躁的な「ならず者国家」へ変貌しました。今なお致死的な放射性物質が遍満する汚染地域へ児童らを帰還させ、強烈な被曝にさらしているわけです。疎開による社会コストの連鎖的増大を抑制するプロパガンダであり、国家による生存権の侵害であることは語るまでもありません。

トリアージュという戦場医療用語は、損傷の程度によって負傷者を救護するか否かという弁別基準を意味します。破滅的な原発事故により事実上の戦場と化したこの国において、エスタブリッシュメントが独自基準の悪魔的トリアージュ、つまり棄民を策定済みであることは容易に推論できます。官僚主導のもとに地方自治体は粛々とジェノサイドを実践し、一般国民は耳目をふさがれ、その瑕疵も殺意も疑うことすらできないわけです。この概念図式は、同胞が同胞を監視・管理し、一連の殺戮工程を遂行したアウシュビッツ収容者のヒエラルキーと大差ありません。

デビッド・バーリンスキの文化理論を援用すれば、官僚機構とは古代中国より連綿に実行されてきたアルゴリズムであり、換言するならば、社会システムにおいて猟奪をオブジェクト化する恒常発生的なソースコードであり、ヒューマニズムと相克する酷薄な非人格的現象であるわけです。この支配基盤において、道徳性プログラムの実行コマンドは削除され、個々の生命はマシーンの意思決定に委ねられています。

国家崩壊が妄想ではなく俄然に現実味を帯びてきました。原子炉事故による首都圏の汚染、世代間にわたる重篤健康被害、地価暴落による土地資本制度の終焉、担保毀損による金融システムの破綻、GDP2倍超の過剰公債、官僚・米国による社会資本の収奪など、各々のエレメントは亡国の必要条件を万端に満たしています。いずれにしろ我々は人類史上未踏の領域へ突入し、社会条件は旧ソビエト末期を凌ぐほどに悪化していることへ異論はないでしょう。官僚統制主義と新自由主義とが歪に同衾した異形のイデオロギーが、あたかも自己融解を始めているかのようです。

この前提において、TPPは最後の命脈を絶つに等しい国家の自殺行為です。推進派は事実上の関税自主権撤廃、つまり国家主権の委譲を主張しているに等しく、例外なく売国者と見なすべきでしょう。エイリアンに埋設されたトライポッドが執拗に蜂起のときを伺っていたようなものです。農業分野へ作為的に論点が集約されていますが、内在本質が保健、金融、医療、さらには教育にいたる全産業分野の市場獲得であることは明白です。

逆説的に言えば、前掲した以外の経済市場においては株式の掌握により、ほぼ支配を完成しているわけです。主要企業の外国人持ち株比率を見れば、東証は60%超、大証に至っては70%を超えているわけですから論述するまでもありません。生産過剰とデフレにより1873年から20年にわたる「大不況」へ突入した欧州は、新たな投下資本先を求め狂乱的な植民地争奪へ乗り出したのですが、この差し迫った背景事情は現在の米国社会と極めて酷似しています。

つまり、侵略が喫緊です。クリントン政権より引継がれる金融を武力とした対日植民地政策において、米国がTPPを収奪の最終フェーズと認識していることは明らかでしょう。Imperialism(帝国主義)という壮大なヘゲモニーゲームの終盤にCheckmateの騎兵が突きつけられています。