野田佳彦首相が、TPP交渉参加を決意、これは「JA切り」、「JA潰し」決断を意味している

板垣英憲

野田佳彦首相が、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加する意向を正式に固めたという。埼玉新聞が10月30日付け朝刊「1面」で、「関係筋が29日、明らかにした」と伝えた。これは、TPPに反対しているJAグループを束ねる全国農業協同組合中央会(全中)が10月25日、「TPPの交渉参加に反対する国会請願」を衆参両院議長に提出したのを承知していながら、事実上、「JA切り」、もっと強く言えば、「JA潰し」に踏み切ったことを意味している。これに対して、鹿野道彦農水相も、「止むを得ない」と了解しているという。
 この決断を促したのは、米国CIA軍事部門資金担当の大ボスであるリチャード・アーミテージ元国務副長官が10月27日、東京国際フォーラムで開かれた笹川平和財団と米国ウッドロー・ウィルソン国際学術センター共催の「第3回日米共同政策フォーラム」で基調講演するために訪日していたことが、強く影響している。基調講演の詳しい内容は、10月28日の「板垣情報局」(アーミテージ元国務副長官は、「必要な役割=おカネを出す役割」を果たして欲しいと野田佳彦首相に強く求めている)で報告しているので、参照されたい。リチャード・アーミテージ元国務副長官は、「日本のTPP交渉参加」を強く求めており、野田佳彦首相にそのシグナルを送った模様である。
野田佳彦首相は、翌28日、首相にして初めて、「所信表明演説」を行っている。このなかで、TPP交渉参加問題に触れて、「環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP協定(環太平洋経済連携協定)への交渉参加についても、引き続きしっかり議論し、できるだけ早期に結論を出します」と述べていた。
 この日は、TPPの交渉に参加する米豪などの9か国がペルーの首都リマで10月19日から開いていた「第9回の交渉会合」が閉幕した日であった。
 実は、TPPの9か国間の交渉を主導している米国通商代表部の(USTR)のカーク代表が10月26日、「最終合意に向けた交渉は「今後12か月かける」と言及した。また、日本の参加については「日本の決断を待っている」と語った」と朝日新聞は10月27日付け朝刊夕刊「1面」で報じていた。
◆考えるまでもなく、米国がTPPに賭けるのは、現在疲弊している米国経済再建のためである。もう1つ、「石油」を担保とする「新基軸通貨アメロ」である。
 米国は、安い石油を買い、自国の油田を温存してきたが、背に腹を替えられず、虎の子の「油田」を担保に「新基軸通貨アメロ」を発行し、「不良債権をチャラにする」奇策を実行せざるを得なくなってきているのだ。米国市場により高度経済成長を築いてきた日本は、同盟国である米国を衰亡させるわけに行かず、助けなくてはならない間柄にある。
これも詳しくは「情報局」(米国オバマ大統領が猛烈努力、意外な「担保」を提供し新基軸通貨「アメロ」の実現を認めさせるのに成功させたという)に書いているので参照されたい。
 聞けば、米国内では、大量の農産物が売れないで売れ残っているのだという。いわゆる「過剰生産」と言えば、1929年の世界大恐慌を想起するほどの最悪の経済現象である。価格は低下するし、売れない農産物は、焼却処分するとかないという世にも恐ろしい現象である。
 売れ残った農産物を食材にして、「外食産業」が成長し続けている。米国は、工業製品の物づくりを衰退させて、金融大国を陵駕してきたけれど、博打経済で沈没した。所詮は、博徒というヤクザ世界と何ら変りはなかったのである。しかし、物づくりの原点である農産物が残っていた。これを最強の武器として、経済再建を果たし、再び覇権国家の権勢を張ろうとしている。これは、ある意味で、物づくり国家である日本及び日本人にとっては、喜ぶべきことである。