オバマ大統領のイラク戦争終結宣言の裏にある「アメリカの現実」 

天木直人ブログ

もうひとつだけ、オバマ大統領のイラク戦争終結宣言に関係する
メルマガを書いてみたいと思う。
12月17日の日経新聞に「イラク戦争 終わらぬ余波」という
見出しの、ワシントン発大石格という記者の記事があった。
この記事は、どこにもイラク戦争は間違っていたという批判の言葉
はない。
しかしそこにはイラク戦争の裏にある米国の苦悩が淡々と書かれている。
それを読む者は、いかにイラク戦争が愚かな戦争であったかを思い知ら
される。
最強のイラク戦争批判記事だ。
いや、イラク戦争に限らない。
およそ戦争というものがいかに間違っているものかを教えている。
どの国であれ、指導者は、いかなる理由があるにせよ戦争を行っては
ならないのである。
ましてやそれが自らの利権や政権維持、あるいは権力誇示などで行われる
とすれば、それは戦争犯罪として戦争が終わった後に裁かれなければなら
ないのだ。
勝っても負けても、その国に利益をもたらしても、戦争犯罪者なのだ。
「勝てば官軍」などという言葉は民主主義国家には存在しない。
大石格氏の要旨以下の記事は、そのことを教えている。
久しぶりにいい記事を読ませてもらった。これがジャーナリズムと
いうものだ。
「・・・アフガン・イラク戦争は戦地に行くしか仕事がない市民の存在と
社会格差を浮かび上がらせた。
イラクには延べ150万人の米兵が派遣された。帰還兵の過半数の85万
人は失業中。イラクを離れる米兵は『クリスマスまでに故郷に帰れる』との
オバマ大統領の言葉に心躍らせつつ、その後の生活は不安だらけだ。
オバマ大統領は15日(の演説で)、「多くの犠牲のうえに戦争終結
あった」と振り返った。約4500人の戦死者に目が行きがちだが、米国が
背負って行かなくてはならないのは約3万2000人の負傷者だ。道路脇の
地雷で車両ごと吹き飛ばされ、足を失った米兵が少なくない。健康な帰還兵
以上に就職の当てはない。
帰還兵の医療・看護費は総額1兆ドルに達するとの試算もある。年7000
億ドルの軍事費を削り込んだぐらいで捻出できる金額ではない・・・
 勝利の高揚感なき終戦に米国社会は冷めきっている」
                                了