迎撃ミサイル発射命令とは冗談だろう

天木直人

田中直紀防衛大臣が19日の参院予算委員会で、自衛隊に破壊措置命令
を下す事を検討する考えを示したという。
これはほとんど冗談だと誰もが思う。
しかしたとえ防衛問題の「専門家」である石破茂氏が防衛相であったとしても、
同じように破壊措置命令を下すことになるはずだ。
なぜならば日本には米国から買わされた迎撃ミサイルシステムがある。
いまそれを使わなければ何時使うのかということになる。
ところがである。
今再びあの時と同じような茶番が繰り返されることになる。
2009年の北朝鮮テポドン発射騒ぎを思い出してほしい。
あの時日本国民が知らされたのは米国から導入した迎撃ミサイルシステムの
役立たずぶりであった。
すなわちわが国の迎撃ミサイルシステムは、一方において発射されたミサイル
をその発射直後に叩き落すため、イージス艦に搭載されたSM3があり、他方に
おいて、SM3で打ち損ねたミサイルがわが国領土に降下する直前に本土から
迎撃するPAC3の2段構えで成り立っている。
ところが北朝鮮の「衛星」の発射の直後に、それをミサイル攻撃であるとみなして
叩き落すなら、それは戦争に直結する軍事行動である。
打ち損ねて北朝鮮にミサイルを打ち込めば戦争だ。
だからこれははじめからやらない。
だからPAC3による迎撃だという。
しかしPAC3の射程距離はせいぜい数十キロである。
あっという間にどこまら飛んでくるかわからないミサイルを
直前になって撃ちおとすことなど誰が考えても無理だ。
そして撃ちおとしてミサイルが東京や皇居のど真ん中におちたらおしまいだ。
おまけに今度は沖縄沖海上に飛んでくる事を想定した迎撃ミサイル発射命令
である。
どうやって撃ちおとすというのか。
はずれたらそのミサイルはどこへ着弾するのか。
繰り返して言う。
大騒ぎして下される迎撃ミサイル発射命令は茶番だ。
そんな事を口走るのは愛すべき素人大臣の田中直紀防衛相だから
笑って済ませられる。
野田首相が真面目にそれをやったとしたらどうか。
それこそ本物のお笑いになる。
                                        了