消費増税より難しい原発再開の政治決断

天木直人

きょう3月24日の各紙が報じる記事のなかで私が最も注目したのは
福島県にある関西電力大飯(おおい)発電所再開の政治決断問題である。
政府の原子力委員会斑目春樹委員長)は23日、大飯発電所が行った
ストレステスト(耐性検査)の評価報告書を了承した。
この結果、野田首相と関係三閣僚が安全性を確認した上で、4月上旬
にも再稼働の同意を福井県に求める方針だという(3月24日読売)。
しかし野田首相にそんな政治決断ができるのだろうか。
消費増税の政治決断で精いっぱいの野田総理だから難しいと
言っているのではない。
原発再開の政治決断のほうがもっと難しいと思うからだ。
各紙の解説記事を読むとどう考えてもそれは無理のように思われる。
本来ならばその理由をここで各紙の記事を引用しながら書くのである
が、たまたま目に留まった早朝のTBS「みのもんたのサタデーずばッと
の光景がその理由を見事に物語っていた。
それを再現する事によって私の解説の代役とさせていただく。

 出演者は次の通りだ。

 司会者    みのもんた
 政治解説者  岩見隆夫
 民主党議員  山井和則
 自民党議員  小野寺五典

彼らの発言は勿論この通りではない。印象的な言葉を記憶をたどって
再現している。しかし言っている事はこの通りだった。
皆がなげやりな笑いをうかべて話していたのである。
岩見    政治判断で決める問題ではない。原子力委員会
       そんなこと言っちゃいけませんね。
山井    政治決断ではきめません。安全かどうかです。
小野寺   安全かどうかわかる政治家など一人もいませんよ。
みのもんた われわれ国民はもっとわかりません

ここには原子力安全委員会斑目委員長はもちろん居合わせてはいな
かった。
しかし、その斑目委員長は記者会見でこう言っている。

「一次評価だけでは不十分」だと。

そして斑目委員長は繰り返し言っている。
安全性だけで原発稼働を決めている国はない。どこの国も政治決断だ、と。
消費税増税さえも政治決断できないで先送りしているような野田首相
どうして原発再開の政治決断を下せるというのか。
安全性の判断ができない原子力委員会に最終判断を政治が押し付けてどう
するのか。
誰も責任をとろうとしないままこの国の原発政策は漂流していく。
もはやこの国は原発を維持していく資格はない。
やがて原発はこの国にからなくなるに違いない。
そうであれば早いほうがいい。
                          了