東電病院 稼働率2割でも 一般患者受け入れず

東京新聞

 東京電力保有する東京電力病院(東京都新宿区)が、稼働率が低いにもかかわらず、社員やOBの専門病院として一般患者を診療していないことが分かった。病院の運営には東電からの助成が入っているとみられ、一兆円の公的資金を受けながら、過大な福利厚生施設を維持することに批判も集まりそうだ。二十七日の株主総会で、東京都の猪瀬直樹副知事が指摘した。
 一九五一年に東電社員らの健康管理を目的とする「職域病院」として開設。現在の診療科は内科や外科、整形外科、眼科など九科で、受診は社員やOB、その家族に限られている。
 病床は百十三床あるが、現在の入院患者は二十人ほどで、稼働率は二割未満。東京都が二〇〇九年に定期監査に入った当時も百九十二床の設置許可を受けながら、六十人余りしか入院しておらず、ベッド数を減らすよう指導していた。
 病院は七階建てで、敷地面積は五千四百平方メートル。JR信濃町駅から徒歩五分、慶応大学医学部に隣接する一等地にあり、資産価値は百二十億円を超えるとみられる。東電改革の方向性などを示した「総合特別事業計画」で、三年以内に七千七十四億円相当を売却すると明記したが、病院は売却対象とせず、継続保有の意向を示している。
 都内にはNTTやJR、東芝といった大企業の病院もあるが、社員に限定せずに一般患者も受け入れている。東電病院の担当者は取材に「社員の健康管理という福利厚生のために開設された病院なので、一般患者は受け付けていない」と説明した。
 猪瀬副知事は「赤字を垂れ流している社員だけの病院をこれからも運営するのか。戦後の医療機関が不足した時代ならまだしも、現在の医療状況をみれば、売却すべきだ」と疑問を呈している。 (浜口武司)