国のためどちらが悪者なのか 政権交代後の裏切りモノを告発する

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国のためどちらが悪者なのか 政権交代後の裏切りモノを告発する
(日刊ゲンダイ2012/6/29)

野田と小沢の将来の歴史的評価を考える

野田佳彦小沢一郎――。

明日にも正式に袂を分かつ2人の政治家を将来の歴史家はどう評価するだろう。

選挙民を裏切る自公民談合で民主主義を否定した野田に対し、反旗を翻した小沢は筋を通しているように見える。しかし、数の力では及ばない。このままでは引っかき回すだけで終わってしまう。国民のイライラは募る。どっちもロクなもんじゃない。それが世論調査の数字などに出る。


しかし、2人を比較し、どちらが日本の真の民主主義のために貢献したのか。この試金石で比較すれば、悪者はどっちかはハッキリしている。評論家の佐高信氏はこう言った。

「ワシントン・ポスト紙の論説委員、フレッド・ハイアット氏は今年4月、野田首相のことを『ここ数年でもっとも賢明な首相である』とべた褒めしました。ハイアット氏がその根拠として挙げたのが、(1)消費税引き上げ(2)原発再稼働(3)沖縄の米軍基地問題(4)TPP参加の4つです。どれも国民の利益にはならないが米国の国益にはかなう。そこで4つに邁(まい)進(しん)する『野田は歓迎』と書いたのです。国民が望まないことをやり、米国に盲目的に追随する。これが野田首相の正体で、民主主義の『民』の字が『米』に代わったような政治をしている。この裏切りは見過ごせません」

◆鳩山、菅よりヒドイ野田の裏切り

国民も同じ思いで怒っている。なぜかというと、民主党による政権交代とは、まさに真の民主主義の確立が目的だったからだ。
官僚と米国の言いなりだった自民党一党独裁に終止符を打ち、国民生活のための政治をやって欲しい。政治主導=国民主導で、真の民主主義を根付かせて欲しい。これが政権交代の原点だ。

それを野田は完膚なきまでに裏切った。ここが許し難いのだ。
「4つはすべて米国の利益につながりますが、民主党の歴代首相は、さすがにためらいがあった。鳩山氏は消費税を認めず、沖縄米軍基地を移設しようと努力した。菅氏だって脱原発にこだわっています。ところが、野田首相はためらいもなく、すべての面でひれ伏した。政権交代後、誰が最悪の裏切り者なのか。間違いなく野田首相だと思います」(佐高信氏=前出)

それに対して、小沢一郎の闘いとは、一言で言えば、「民主主義を根付かせるための挑戦」だ。中選挙区制を廃し、小選挙区制を導入したのも、政権交代が可能な2大政党制をつくるためだ。そうしなければ、国民に選択肢はないからである。そのうえで、マニフェストを掲げ、勝った政党は公約の実現に死に物狂いで努力する。民意をバックに選ばれた政治家が国民のために外交交渉にも臨む。米国ベッタリの外務官僚に任せていたら、いつも米国の言いなりになる。米軍基地は固定化し、日本は植民地のようになってしまう。それでは立ち行かないから、政権交代を目指し、やり遂げたのである。
それなのに、志半ばで党を飛び出る小沢にはガックリする。増税派なんか蹴散らせ、と言いたくなる。しかし、野田の背信はもっとひどい。これじゃあ、元の木阿弥なのである。

◆日本の歴史で民主主義に挑戦した首相は皆無
現実の政治家がかくもデタラメのせいか、世間には「昔の政治家は偉かった」みたいな風潮がある。司馬遼太郎の小説がもてはやされ、「坂の上の雲」がTVドラマになって、視聴率を稼ぐ。

しかし、これには強烈な違和感がある。明治憲法下の政治家なんて、民主主義の発展という観点では何にもしちゃいないのだ。欧米では普通選挙が当たり前だったのに選挙権を特権階級に限定し、首相は元老が指名した。平民宰相・原敬までは薩長か公家出身者が首相をタライ回しにしてきたのだ。「政・財 腐蝕の100年」の著者である作家の三好徹氏はこう言った。
「戦前戦後を通じて、日本を真の民主主義国家にしようとした首相はどれだけいるのか。少なくとも戦前はひとりもいませんよ。わずかに原敬が政党に政治の主導権を握らせようとしたが、暗殺された。戦後も似たようなものです。GHQ占領下では民主主義なんてあり得ないし、55年体制の日本政府は米国務省の日本課のような存在だった。国民が日本は独立した民主主義国家であるかのような印象を持っているとすれば、それは大きな誤解です」

◆米国ベッタリでなければ潰されてきた歴史

元外交官で作家の孫崎享氏は近く、「戦後史の正体」(創元社)という本を出す。これを読むと、戦後の日本の政治家もロクなもんじゃなかったことがよく分かる。
「1945年9月、降伏文書の調印の際、米国は当初、公用語を英語にすることや円のドル変更、米軍による裁判などを突きつけてきた。重光葵外相は拒絶するが、その後、すぐに内閣が代わり大臣を外されてしまう。後任の外相になったのが『負けた国はまな板の鯉だ』と言って、米国の言いなり路線を唱えた吉田茂です。米軍駐留経費の日本負担で抵抗した石橋湛山蔵相も切られ、安保条約では吉田茂がどんどん米国の要求をのんでしまう。以後、米国に抵抗した政治家は短命に終わり追随すると長期政権になる。こんな傾向が続きました。いつの間にか日本の独立はないがしろにされ、民意無視の米国追随路線が当たり前のようになってしまったのです」

戦後の長期政権ランキングは佐藤栄作吉田茂小泉純一郎中曽根康弘池田勇人岸信介の順になる。なるほど、米国ベッタリだ。
孫崎享氏によると、米国は日本の政治家を潰そうとするときに、自分の手は汚さず、日本の司法権力を巧妙に使うという。確かに田中角栄細川護煕鳩山由紀夫小沢一郎らは検察捜査によって追い詰められた。彼らに共通しているのはアジア重視、米国一辺倒外交からの脱却を目指したことだ。それが米国の怒りを買ったのは間違いない。その司法はメディアを上手に使う。ほとんどが親米の大メディアはガンガン、彼らを叩いていく。こうして、真の意味で独立した民主主義国家を目指した政治家は葬り去られてきたのである。

小沢一郎は最後の挑戦者になるのか

孫崎享氏が続ける。
「日本に独立した民主主義はない。それは1945月9月からちっとも変わっていません。政権交代はそれを取り戻すチャンスだったが、菅、野田政権に裏切られた。鳩山、小沢氏には期待したが、米国と官僚、マスコミが一体となって、彼らを潰した。この国のメディアはどこを向いているのかと思います。マニフェストを守り、日本を民主主義国家にしようとしている小沢氏がなぜ、反乱軍扱いになるのか。彼こそが王道なのにそう報じない。メディアの偏向した報道姿勢は目に余ります」

元外交官の天木直人氏にも、野田と小沢の歴史的評価はどうなるだろうか、と聞いてみた。
「戦前は論外として、戦後も日本には真の民主主義を根付かせようとした政治家はほとんどいなかった。それに挑戦し、闘う最後の政治家が小沢一郎であった。こういう歴史的評価になるのではないでしょうか。その試みが成功するかどうかは国民運動にもかかっています。民主主義革命を経験していない日本は、いつも官僚や米国にやられてしまう。政権交代でダメなら、アラブの春のような民衆のうねりが必要です」

野田を筆頭にした裏切りの亡国政治家にこれ以上、託したところで無駄なのである。



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