玄葉外相の不毛な訪ロ外交を不毛と書かないメディアの罪

天木直人

私は7月21日のメルマガ第553号で玄葉外相が北方領土問題の
交渉の為にロシアを訪問することは悪い冗談だと書いた。
どうみても不毛な交渉に終わるのに何のために日本を離れるのか。
そんな暇があればオスプレイの配備見直しを米国と交渉すべきだ.
それこそが今この国外相に求められている仕事だ.
ロシア訪問は敵前逃亡だ、と書いた。
それが玄葉外相の耳に届いたかどうかはわからないが、玄葉外相が
オスプレイについて発言した。
ところがその発言を聞いて驚いた。
中国海軍抑止のために日本にとって必要だ(25日記者会見)と
オスプレイの配備は日本の要請だ、などと語ったのである。
こりゃダメだ。
そんな玄葉外相が「北方領土問題をめぐる実質的な交渉を再稼動させ
たい」(7月27日)と胸をはって予定通り訪ロした。
その結果どうだったか。
きょう29日の各紙が一斉に報じている。
玄葉外相がメドベージェフ首相の国後島訪問について遺憾の意を表明
したのに対し、ラブロフ外相は「抗議を受け入れる気はない、今後も
要人訪問を続ける」と応じたという。
外相会談後の共同記者会見においてラブロフ外相は、今後も実効支配
は継続すると述べたという。
これを要するにまったく不毛な玄葉外相の訪ロであるということだ。
しかし、私がこのメルマガで言いたい事は、玄葉外相の失敗外交の
ことではない。
そんな事は始めからわかっていたことだ。
私がこのメルマガで言いたい事は、かくも不毛な外交を不毛だとは書
かず、「今後とも首脳、外相、事務レベルの3つのルートで協議を継続
することを確認した」(毎日)、とか、「当初予定になかったプーチン
大統領との会談が行なわれた。ロシアの大統領が外国の一閣僚と会談す
るのはまれで、異例の厚遇である」(産経)とか、「プーチン大統領
森元首相の訪ロを歓迎した」(日経)などと書いている。
不毛を不毛と書かずに、いいところばかりを無理して探して書いてい
るかのような記事だ。
ウソを書くメディアは国民に対して大きな背信をおかしている。
この国の政治を悪くしたのは、真実を書かないメディアである。
そういえば玄葉外相の訪ロ直前に発売された週刊新潮8月2日号は
こう書いていた。
・・・どんなに歩きまわっても何の収穫もないことを「犬の川端
歩き」という。プーチン大統領やラブロフ外相と会談するため、玄葉
光一郎外相が7月27日から訪ロするが、そのたとえを地で行く不首尾
に終わりそうだ。「プーチンに10分でも会えるなら場所はどこでも
いとわない、と外務官僚が押し込んだ結果、『ソチにまでついてくる
なんて』とロシア側からストーカー扱いされる始末です」(外務省
担当者)・・・
なるほど。これならわかりやすい。
                               了