福島県産の葉タバコ、2年ぶり収穫

YOMIURI ONLINE

今年こそ出荷を

 東京電力福島第一原発事故で一時、栽培が中止されていた福島県産の葉タバコの収穫が2年ぶりに行われ、12月頃の出荷に向け、乾燥などの準備が進んでいる。

 復活への思いを強める県内の農家は今年、業界の出荷基準値を満たそうと、放射性物質の影響を減らす取り組みを行った。現在、検査結果を待っている状態で、「今年こそは」と期待を寄せている。

 「質がいいタバコが出来た」。福島県田村市で約130アールの畑を耕す大橋直哉さん(27)は、刈り取りを終えた葉タバコを見てそう語った。昨年4月、土壌汚染や風評被害などを懸念し、県たばこ耕作組合の呼びかけで、県内全域で作付けが中止された際、約3万本の苗を処分した。

 7年前、祖父母の畑を守りたいと跡を継いだ。植物の病気に強く、安定した供給ができているのが自慢だっただけに「やりきれない思いだった」と振り返る。

 それでも「タバコ農家としての生活を続けたい」と、青森や宮崎、秋田の3県の知人の農家を訪問。約3か月間、住み込みで苗植えや収穫作業を手伝い、自分の畑の土に触れることができない悔しさを晴らした。

 今年1月、畑の放射性物質が少ないことから日本たばこ産業(JT)との栽培契約が認められ、3月に作付けを始めた。畝の間に麦を植え、地表の放射性物質が雨で葉に跳ね返るのを防いだり、畑から枯れ葉を取り除いたりするなど、除染に取り組んだ。「天候に恵まれ、葉の状態も良く、申し分ない出来だ」と満足している。

 ただ不安材料もある。出荷先のJTは、農家ごとにモニタリング検査をしており、一般食品についての国の規制値と同じ1キロ・グラムあたりの放射性セシウム100ベクレルを、1農家でも上回れば、合併前の旧町村単位で取引をしない方針だ。

 これまでも、一部の農家と契約を結んでおらず、県たばこ耕作組合によると、全675戸のうち半分近い318戸が、今年も収穫できなかった。

 検査結果が出るのは、10月中旬頃だ。「支援してくれた人のためにも、福島県の葉タバコをアピールしたい。ただ、再び廃棄することになったら、どうしたらいいのか……。来年、耕作意欲を保てるか分からない」と複雑な胸の内を語った。