自動車損害賠償責任保険の値上げに異論を唱えないメディア

天木直人

私は1月14日のメルマガ第32号で書いた。
1月14日付の日経新聞経済面の「風速計」という匿名コラムで驚く
べき事実が書かれていたと。
すなわち補償支払いが増加し財源が不足している事を理由に金融庁
自動車損害賠償責任保険の値上げを図ろうとしている。
ところがその裏で、自賠責保険の積立金から国の一般会計に約1兆1
000億円が貸し付けられ、そのうち6000億円もの資金がいまだ返
済されないままであるという。
これは自動車を所有している国民からカネを召し上げて、その積立金
を一般会計の不足に当てる手のいい流用ではないか。
この不祥事を隠して保険を引き上げるのは国民を騙す詐欺まがいでは
ないか。そんな保険料の引き上げなど到底許されない、と。
そして私はその事をメディアに知ってもらい、新聞紙上で書いて国民
に知らしめてほしいと願って私のブログでも書いた。
ところがきょう1月18日の各紙を見て驚いた。
大手新聞のすべてが当たり前のように事実だけを報じている。
すなわち金融庁は1月17日に今年4月から自賠責保険の保険料を全
国平均で13.5%値上げすることを決めたと。
ところが、その積み立て金の膨大な部分が一般会計に消えていること
に言及する記事は皆無だ。
これは明らかに金融庁に嫌われないための意図的な不都合隠しであ
る。
さもなければ経済記者の無知、怠慢、不勉強だ。
いずれにしてもジャーナリズムの使命である「国民の知る権利」に応える努力を放棄しているとしか思えない。
メディアは自らを振り返って反省しなければならない(了)。