復興はなぜ進まないのか 政権居座りに震災を悪用

Gendai,Net

政権延命のため民主党が故意に遅らせていると見られる疑惑の情勢

<審議入りする3次補正程度ではカネが足りず復興第一のハズの野田政権は「TPP」など他の政策を並べ立てて国民の目くらましに躍起。首相本人は連日パフォーマンスに遊んでいる>
総額12兆1000億円の3次補正予算案が今週28日、国会に提出され、やっと審議が始まる。野田内閣と大マスコミは、「大震災からの本格的な復旧・復興事業を盛り込んだ」と喧伝しているが、いくらなんでも遅すぎるだろう。
 3・11から、すでに7カ月以上が経過。東北は厳しい冬の訪れが目前だ。被災地の焦りと疲労はすでにピークを通り越している。
 しかも補正の中身も本格的どころか、スカスカなのだ。エコノミスト紺谷典子氏が言う。
「ハッキリ言って、今回の3次補正の数字はマヤカシです。総額12.1兆円のうち震災関連は9.2兆円。このうち約2.5兆円が1次補正に充てた年金財源の穴埋めに消えます。さらに約2兆円は円高対応の景気・雇用対策の予算をムリヤリ復興事業に結びつけたもの。被災地の復旧・復興に向けた“真水”の公共事業費は1.5兆円程度しかありません。それも4割近くが河川や道路の原形復旧に消え、堤防のかさ上げや区画整理など被災地の本格復興に費やされる予算は微々たる金額なのです」
 被災市町村の復興計画を積み重ねると、宮城1県の復興事業費だけで12.8兆円に達する。3次補正の総額を軽くオーバーしてしまう。これに岩手県の8兆円、原発事故の影響で試算すらできない福島県を含めれば、被災3県の復興事業費は30兆円を突破するのは確実だ。
 それなのに“真水”1.5兆円で一体どうやって被災地を本格復興させるというのか。「世界に誇れる新たな町づくり」は絵に描いたモチだったのか。

<高台移転予算たった7800億円>

 最たる例が被災地の「高台への集団移転」だ。高台移転は、今では存在すら忘れられている「復興構想会議」が提言し、国も復興計画の大きな柱に据えたはずだ。今年7月に菅政権がまとめた「復興基本方針」では、高台移転や被災地の土地区画整理などの事業規模を8兆〜9兆円と見積もっていた。
 ところが、3次補正で高台移転と土地区画整理に費やすのは、新設の「震災復興交付金」に組み込まれた7800億円程度。これじゃあ、ハシタ金にすぎない。
 被災自治体が高台移転を進めようにも、国の支援が足りなければ二の足を踏む。その分、被災地の復興と、地震津波で家と職場を失った被災者の生活再建は遅れに遅れてしまう。まさに負の連鎖である。
 いまだ避難所暮らしの1700人をはじめ、約5万戸の仮設暮らしの人々、やむなく被災地を離れて、全国各地に避難した推計5万人以上の人々……未曽有の大震災に巻き込まれた被災者は、いつ元の暮らしに戻れるのか。本格的な町づくりが始まらなければ、さまよい続けるしかないのだ。
「どのように被災地を生まれ変わらせるのか。民主党政権は『自治体の自主性に任せる』という美名の下で責任逃れを続けています。任せるべき自治体に財源がないからこそ、国の出番なのです。戦後日本の税制に大きな影響を与えたシャウプ勧告でも『天災は緊急莫大の費用を必要とさせ、罹災地方団体の財政を破綻させる』として、『中央政府は災害復旧に対する財政上の全責任を引き受けよ』と定義しています。民主党は国の本来の務めを放棄しているのです」(紺谷典子氏=前出)
 野田は「復旧・復興は最大かつ最優先の課題」と豪語したはずだ。しかし、やっていることを見れば、本気で復興を急いだり、十分な予算の手当てをする気なんてないことは歴然なのだ。